マーラー 交響曲第6番の楽曲解説

第3楽章 変ホ長調 4/4 6部形式

変ホ長調の主題⑬は、後半部のソ♭による変ホ短調の陰りが特徴。経過主題的な⑭aの後、イングリッシュ・ホルンの奏する⑮は叙情性豊かな旋律線が、01年に初演されたラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を連想させる。

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⑭aはトランペットの強奏⑭bによって、願いを籠めた主題としての性格が強まり、ヴァイオリンによる〈トリスタンとイゾルデ〉の《愛の死》の引用⑯aで、 より真摯なものになっていく。その原型としての《愛の死》⑯bは、第1楽章の中心主題Xを含み、アルマ主題にも繋がるので、非常に奥の深いコラージュとい うことが判る。

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ホルンのファンファーレと共にカウベルが鳴り始め、第1楽章の牧歌的なシーンに戻ったようになるが、ここでのカウベルは舞台内なので、英雄が“実際に牧場のある我が家に戻った”ことを窺わせる。この楽章には、細かな変拍子は全く登場せず、4拍子の安定した流れを中心に、オペラの愛の二重唱を思わせる濃密な表現が頂点を築く。英雄を象徴するホルンを中心にした、オーボエ、イングリッシュ・ホルンなど管のソロ、ヴァイオリン対チェロやヴィオラ、両翼配置ならではの第1・第2ヴァイオリンの掛け合いがステージを大河のような感情のうねりに巻き込んでいく。マーラーの書いた最も感動的な緩徐楽章と言っても過言ではあるまい。

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