サン=サーンス (1835~1921) 交響曲第3番 《オルガン付き》 の楽曲解説

第Ⅰ部・前半 - 第1楽章(アダージョ→アレグロ・モデラート) ハ短調 6/8拍子 序奏付きのソナタ形式

序奏部は②aのように、下降音型(バッハやモーツァルトも用いた『嘆き』や『涙』を表わす定型)と、祈るような上昇音型という反対方向のヴェクトルから成る。

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この呼び掛けに応じたかのように弦が〈ディエス・イレ〉を裁断した第1主題①cで主部に入る。それを受け継ぐ②bは、序奏②aの後半。このように主題が強固に関係づけられているのが大きな特徴である。

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こうした有機的な構成は明らかにベートーヴェンを模範としているが、もう一つの大きな影響は「三主題制」で、短調のまま嘆きを引き継いだ経過主題③が強い印象を与える。〈ディエス・イレ〉を含んだ接続①dを経て長調に到達した第2主題④に、第1主題的な刻みを重ねる二重構造は〈運命〉の第1楽章を継承。

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〈ディエス・イレ〉の変容①eによるブリッジに序奏の②aが再現されて展開部に入るが、以後の闘争的な展開は、ほぼ〈運命〉に倣ったもので、再現部回帰に劇的な頂点をもってくる手法も同様だ。

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再現部での工夫は、第2主題④が回帰する際に、伴奏音型の16分音符の縛りを消して、カンタービレの自由度を増すこと。序奏②aが再現されて、アダージョへと繋がる。

第Ⅰ部・後半 – 第2楽章(ポコ・アダージョ) 変ニ長調 4/4 三部形式

静かにオルガンが登場。変ニ長調の主和音を準備し、弦がコラール風な主題⑤aを奏する。簡単な構成の楽章で、オルガンは背景として和音を奏するだけだが、その神秘的な音色は素晴らしく、オルガンが初めて交響曲に導入された意義を納得させる。

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ヴァイオリンが掛け合う中間部の⑤bは、⑤aの変容に他ならない。ピチカートが第1楽章の①eを再現した後、ハープ的な分散和音に乗ってコラール主題⑤aが再現され、宗教的な法悦を導く。

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