R.シュトラウス バレエ〈泡立ちクリーム〉 作品70(台本:R.シュトラウス)

東洋風の魔法使い達に先導された、騒乱。全ての登場人物に新たなキャラクターも加わった破壊的なデモと混乱による暗転

ここから、ロマンティックな甘い夢や、コミカルな軽さとは全く次元の違う暗部に突入。

22. カオス(混沌・混乱) 混沌や混乱を表わすタイトルのこの場面に、R.シュトラウスは変奏曲形式のパッサカリアを選んだ。バッハのオルガン曲BWV582のように、8小節単位で変わってゆくこのパッサカリアは、小節の縛りがあるため原罪的な重さを感じさせる曲が多い。しかも短調に暗転するので、ブラームスの交響曲第4番の第4楽章をリメイクした感もする。ブラームスの場合、打楽器がティンパニだけなのに対し、バレエに制約は無いから、色彩とスケール感が段違い。

コミカルな展開を暗転させるティンパニのクレッシェンドが、低音の主題㉟を導く。カステラ、バウムクーヘン等、定番の様々なスイーツが 東洋風の魔法使い達に先導されて登場。8の字型の堅焼きパンは、固さを感じさせるようにマルカートで、バターを塗り付ける描写はグリッサンド、というように、ここでもリアリズムに徹しているが、ここでのお菓子達は『世の中に不満を持つ集団のデモ行進』という設定。マルチパンやレープクーヘン等は武装姿で再登場し、東洋風の魔法使い達はアジびらを撒いて混乱を先導する。

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23. 騒乱のポルカ 2拍子のポルカ㊱に変わると、魔法使い達は拍子をとって煽り立て、群衆は市内に進軍を開始。ケーキ屋の前には物騒な格好をした輩が集まる。

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24. 雷鳴(暴動とビールの輪舞) 最大音量に達した頂点で金管が雷鳴㊲を強奏。同時に〈アルプス交響曲〉で用いた(巨大な銀紙のように見える)雷鳴器が轟き、混乱は頂点に達する。

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暴徒化した群衆を鎮めようと巨大な容器から、お茶、コーヒー、ココアが次々と浴びせかけられるが効果は無し。〈ニュルンベルクのマイスタージンガー〉の第Ⅱ幕の終景では、大喧嘩を始めた群衆に水が浴びせられるが、この場面は、〈アルプス交響曲〉の嵐の場面を上回る。

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