ブルックナー 交響曲第4番〈ロマンティック〉変ホ長調 (第2稿・コーストヴェット版)

第2楽章 ハ短調 4/4

第1主題 ⑦は「静かな歩みで先導する弱音器付きのヴァイオリンとヴィオラ」「アンダンテ・クアジ・アレグレットという指示」「主題はチェロ」の全てを第1稿から継承。「葬送行進曲」という標題は付けなかったが、第2楽章はベートーヴェンの第3番〈エロイカ〉と同じハ短調。曲全体の主調を変ホ長調に決めた時から〈エロイカ〉を意識していたのではないだろうか?⑦はヴィオラにも受け継がれ、中音域の哀歌が楽章全体を支配する。

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もう一つ重要なのは〈田園〉の第2楽章他、多くの作曲家が定型として用いたウズラの鳴き声。この⑧はホルンの1番→4番にリレーされる個所だが、フルート他の木管は、森やシューベルト的な『流離い人』の孤独を感じさせる。チェロによる哀歌が、ヴィオラに受け継がれた⑨は、ピチカートの“歩み”が寄り添う。後半の山場では哀歌⑦がホルンで再現され、トランペットが鏡像的に追従。こうした重層的な流れが大河のような頂点を築いた後、追悼を思わせるティンパニを経て静かに結ばれる。

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第3楽章 変ロ長調 2/4  スケルツォ 3部形式

スケルツォ主部は騎士達の狩りを思わせる。〈エロイカ〉のトリオで主役として登場するホルン3本を1本増やし、二人ずつが騎馬上で吹き鳴らしながら獲物を追うイメージに拡大。途中でテンポを弛める⑫は仲間同士の語らいか。第1楽章コーダを重厚に締め括ったホルン群が、ここでも壮麗なクライマックスを築く。

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変ト長調 3/4に転じたトリオは、馬を下りた大休憩か。この牧歌的な⑬a、コーストヴェット=ノヴァーク版が「フルート+クラリネット」なのに対し、ハース版は「オーボエ+クラ」。オーボエの低音域は、音量を落とすのが難しいから、前者の方が柔らかく始め易い。またコーストヴェット=ノヴァーク版が、再現に該る45小節を「オーボエ+クラ」にして変化をつけているのを見逃してはなるまい(ハースは45小節も「オーボエ+クラ」なので、変化は生じない)。

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