序曲3部作《自然と人生と愛》1891~92年作曲。1892年4月28日プラハにて作曲者自身の指揮で初演。
ドヴォルザークの作曲家としての最盛期、渡米直前の1891~92年に作曲された序曲3部作「自然と人生と愛」《自然のなかで》《謝肉祭》《オセロ》の中の1曲。1892年4月28日プラハにて作曲者自身の指揮で初演された。ニューヨークでの生活から産まれた〈新世界より〉、チェロ協奏曲と並ぶ傑作として高く評価されている。
先ず舞曲風の主題①から始まる。これに短調の②が絡み、交響曲で言えば第1主題群を形成。テンポを落して歌われる③は、スラヴ民俗の歴史を象徴するようなエレジーで、これ以降は展開されないが、オーストリアやロシアといった強国に支配され続けてきた地域や民俗の悲哀を印象づける。軽快なテンポに復帰してからの④は、スケルツォ風。
3拍子に変わる中間部は、先ずコールアングレの⑤aが平和なト長調の世界を印象づけ、フルートやヴァイオリン・ソロが牧歌的に歌う。クラリネットによる⑤bにタンブリンを添えたオーケストレーションも印象的だ。ハープが幻想の森の扉を開けるようなこの中間部は、同郷の先輩スメタナの〈モルダウ〉(1875年に初演)の中間部における妖精達のシーンを彷彿とさせる。
こうした新出主題が展開部を形成した後、提示部における主題群が次々と再現されるが、その繋ぎとして新たに挿入されるブリッジの豊富さも、ドヴォルザークの才能の豊かさを証明している。コーダは踊りの輪が加速してゆくように、カーニバル的な盛り上がりをみせ、打楽器群の色彩的な乱舞の中に結ばれる。