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アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団創立50周年記念委嘱作品。1938~39年に作曲され、39年11月23日にウィレム・メンゲルベルク指揮、コンセルトヘボウ管弦楽団により初演された。ハンガリ一民謡「くじゃくは飛んだ」は、かつてオスマン帝国の支配下に置かれたマジャール人を囚人になぞらえ、彼らの自由への情熱を歌ったものである(この状況を「鎖なき囚人」と呼んでいた)。これはまた、作曲当時に勢力を強めていたファシズムに対して、自由と人間性の擁護を訴えることを意味していた。
「飛べよ、くじゃく 牢獄の上に 哀れな囚人たちを 解放するために くじゃくは飛んだ 牢獄の上に だが、囚人たちは 解放されなかった くじゃくは飛んだ 牢獄の上に 哀れな囚人たちを 解放するために」
20世紀ハンガリーのアディ・エンドレ(1877年~1919年)は、自由に対する情熱を歌ったこの民謡を改変して詩を書き、コダーイは、民謡をもとに1937年に合唱曲を作り、2年後に変奏曲として本作を作曲。当時ナチスと結んで非人道的な政策を強行していたホルティ・ミクローシュ政権に対する怒りと抗議をこの曲に込めたと言われている。
主題①は低弦によって提示され、一旦、雄大な頂点が築かれた後、ティンパニと弦を中心に豪快な②がハンガリー民族の力強さを描き、木管による軽快な③が続く。それを民族舞曲的な④が締めくくる。
①を変奏させた⑤は、トロンボーンのクレッシェンドが力強さを強調。これはマジャール民族の素朴なパワーを感じさせずにはおかない。木管による⑥の後、民族舞曲的な⑦や、より軽快な⑧が楽しそうに続く。