ムソルグスキー 交響詩〈禿山の一夜〉 原典版

冒頭①はコルサコフ版と同じだが、②は最初の問題個所。コルネット2本のユニゾンによる②には、フルート2本とオーボエ2本が同じfffで重なるのだが、木管はコルネットに消されてしまう。しかも、これにトランペット2本が8分音符の同音反復で吹き続けるので、それぞれが打ち消しあって混乱を招く。オーケストレーションの達人(コルサコフがそうだった)だったら、真っ先に修正するだろう。初期のブルックナーと、指揮者経験の豊かだった弟子達との間で生じたのと同じ問題が、ここにもある。

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トロンボーンとチューバによる(最も悪魔的な)③や、地を踏みつけるような④、魔女的な⑤もコルサコフ版と同じだが、楽想が一段落した後の付点リズムによる舞曲的な⑥は、コルサコフ版には無い。この「魔女達のおしゃべり」では、変拍子や原色的なオーケストレーションが、恐怖感を一段と増幅。後半ではコルサコフ版でも多用されている⑦や⑧が、更なる狂乱へと煽り立てる。

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原典版の特徴の一つは、一つの楽想を盛り上げると、ぶっきらぼうなくらい荒々しく断ち切ってしまうこと。⑥への入りもそうだが、静寂からのクレッシェンド⑨を扉にして始まる展開部的なエピソードも同様だ。ここでは⑤や④が楽器を変えて執拗に反復し、変拍子をピン・スポット的に挿入。ブレーキとアクセルを踏み替えながら盛り上げ、熱狂の中に閉じられる。

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