マスネ 組曲『アルザスの風景』の楽曲解説

Ⅰ・日曜の朝 アレグレット・モデラート 二長調 4/4拍子

村の静かな朝の情景。クラリネットとフルートによる主題①は、いかにも長閑な農村地帯のそれだ。オーボエによる②は、①の3連符を受け継いでいる。クラリネットによる新たな主題③aを契機に、曲は休日らしい『市の賑わい』に発展し、① ②それぞれの舞曲的律動感がトゥッティで強調される。

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中間部では会衆の歌うコラール《目覚めよと呼ぶ声あり》④をホルンと弦が描写。その後半には神を讃える主題の中で最も重要な「ド・ソ・ラ・ミ=《ロマネスカ》」が含まれている。

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「通りは人影もなく、家はからっぽで、戸口でひなたぼっこをしている老人が少しいるだけだ。教会は一杯で、時おり讃美歌が通りすがりに聞えてくる」という原作そのままの敬虔な情景で、アルザスの人々の純朴な宗教観が伝わってくる。

後半は、既出の主題が再現。「市」の活気がダイナミックに強調されるぶん、コーダの祈りと静けさが印象づけられる。

Ⅱ・酒場で アレグロ ト長調 3/4

飲んで、陽気に歌い踊る村人達。ティンパニを音頭取りに3拍子の舞曲⑤が始まる。クラによる第2主題③bは③aの変奏。バレエなら同一人物が、一杯機嫌で踊り出したような振り付けになろう。ハ長調に転じた第3主題⑥はヴァイオリンの優美な踊りに中低弦の下降音型が対旋律的に絡み、カップル成立を匂わせる。

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中間部は変ホ長調・2/4に曲想が一転、「山男達=ホルン」が気勢を上げ、満場がそれを囃し立てて盛り上がる⑦。

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再現部は、3拍子の舞曲に戻って既出主題が再登場するが、⑥のカップルは姿を消してしまったようで、これが次曲の伏線になる。

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