シベリウス 交響詩〈春の歌〉

sibelius photo 360px作曲されたのは、38歳の1894年だから、初期の大作〈クレルヴォ交響曲〉より3年後、〈カレリア〉組曲の翌年、99年に書かれた交響詩〈フィンランディア〉よりは5年前にあたる。但し〈フィンランディア〉のような愛国的な色合いはなく母国の大自然をおおらかに讃えた賛歌になっている。

曲を特徴づけているのは、主題の“息の長さ”。第1主題は ①a + ①b のように長大で、歌曲や賛美歌として発想した楽想を転用したようにも思える。チェロ+ヴィオラとクラリネットに始まる ①aと、木管をクラからオーボエに替えた ①b から成るが、①b の後半にヴィオラのソロを加えているのが効果的だ。

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オーケストレーションは、後の交響曲のように単一の楽器で主題を印象付けることはせず“盛り上がるに連れて楽器を増やす”という、オーケストラのスコアを書き始めた作曲家らしい上塗り的で分厚いオーケストレーションが続く。

冒頭から、こうした賛美歌風の横広がりの流れが続くだけに、②a の低音部のコントラバスのピチカートが(単純な手法ながら)効果的だ。この副主題部 ②b は、全金管を分厚く重ねた雄大な広がりが特徴。それに続く ③ は、低弦のピチカートがヴァイオリンにまで広がることで“後打ちのリズム”がパワフルに強調され、頂点が築かれる。

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チェロ以上の弦をユニゾンで重ねた ④ は、これまで同様、素朴ながら力強い流れを受け継ぐが、ホルン+トロンボーンが3拍子のリズムを執拗に反復することで力感が生れる。こうしたあたりは、後の交響曲の頂上部に於けるシベリウスならではの“真っ向、ひた押し”の力相撲の片鱗。最後はグロッケン ⑤ が教会の「鐘」を音響的に印象づけ、大自然の賛歌と神への賛美が一体化して結ばれる。

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