ベートーヴェン 交響曲 第6番〈田園〉作品68

第3楽章 「農民の楽しい集い」ヘ長調 3/4拍子 5部形式のスケルツォ

実質的にベートーヴェンが開発したと言っていい「1小節を1拍にカウントするスケルツォ楽章」で、弦による主題⑤[4+4=8小節]に乗って、オーボエ、クラリネット、ホルンが主題をリレーしてゆく。「村の楽師達が、出損なって落っこちたりしながら、何食わぬ顔で復帰したりする様子を描いた」というベートーヴェンの種明かし的な言葉どおり、一見、規則正しく繰り返されるように聞こえる輪舞の中に、スリリングなギャグが仕組まれている。この輪舞がテンポアップして雪崩込む⑥は、ブリューゲル的な生活感溢れる農民の姿そのものだ。

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第4楽章 「雷雨、嵐」ヘ短調 4/4拍子(実質は2拍子)

〈運命〉の3・4楽章と同様、この後の三つの楽章は続けて演奏される。近年、日本でも日常化した感のある、熱帯性低気圧による突然の豪雨。スケルツォ反復後、⑥が頂点で途切れたとたん、突然、雨が振り出し、ティンパニやトランペットが加わった「嵐」となる。ピッコロは稲妻。

大太鼓や弱音器付きのトランペットを加えた演奏も登場したことがあるが、〈アルプス交響曲〉や〈グランド・キャニオン〉的な演出抜きの、ティンパニだけでも迫力満点なのはお聴きのとおりだ。最後の頂点でトロンボーン2本が加わったところで音量はクライマックスに達し、嵐は遠ざかってゆく。

第5楽章 「牧人の歌、嵐の後の喜ばしい感情」へ長調 6/8拍子 ソナタ形式

フルートの上昇音階の後、クラリネット→ホルンが牧人の歌⑦を歌い、ヴァイオリンが天に感謝するような⑧を繰り返す。様々な主題が嵐の去った喜びを表現するが、その頂点⑨は、第1楽章の①の循環形式的な変容となっている。

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楽章後半になるに従って、ベートーヴェンがこの曲の中に「宗教的な祈り」を盛り込もうとしたという説が、説得力を帯びてくる。フランス革命の中の1808年に〈運命〉と共に初演されたこの交響曲には〝嵐=戦禍が去った後の平和への祈りが込められていた〟と考えるのが自然だろう。それは、同じ日に初演された〈合唱幻想曲〉から〈第九〉へと受け継がれてゆく。

ミレーの「晩鐘」を思わせるコーダは、弱音器付きのホルンが⑦を繰り返す中、静かに結ばれる。

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