展開部前半は、「アルコの第1(Yの音型に由来)対ピチカートの第2」というヴァイオリンの掛け合いに、ヴィオラがffで不規則に介入する。これは、国民楽派の先人ドヴォルザークの〈新世界より〉のスケルツォ楽章コーダへのオマージュであろう。
展開部後半では、第2主題⑤の拡大形等を伴奏する⑨が注目される。音型としては同じ3連符をオスティナート風に繰り返すシベリウス風の回転音型なのだが、ヴァイオリンとヴィオラ以下ではフレージングをずらしている。この暈しは、ミニマル音楽の技法を先取りしたかのようだ。
①②③がトゥッティで戻る再現部は、第2主題の強奏で頂点を築いた後、ティンパニが最弱音でサラバンド・リズムを繰り返すブリッジ⑩によって第2部へと続く。この⑩はベートーヴェンが〈エグモント〉で引用したのと同じサラバンドの原型。ベートーヴェンの場合、スペインからの独立運動におけるオランダの英雄エグモントを描いた戯曲なので、圧政の象徴としてスペイン起源のサラバンドを用いたのは分かるが、ニールセンの直面していた第1次大戦の場合、直接の関係は無い。しかし歴史を溯ると、大航海時代はスペインがヨーロッパ最大の威圧的な強国であり、実際に中南米では進んだ火器を笠に着て、インカ文明を滅ぼしたという暗黒史がある。ヴェルディの〈運命の力〉同様、ニールセンもそうした歴史の含みを臭わしているのではないだろうか。
そうした暗喩とは別に、第2主題⑤のリズムが⑩のサラバンドの拡大型になっている構造も留意すべきだ。
第2部 ト長調 2/4・3/4 3部形式
シューマンの間奏曲的な緩徐楽章を思わせる。主部はクラリネットによって導入される民謡風な主題⑪。金管とティンパニを休みにした小規模な編成は、素朴な曲想と相まって農家の家庭的団欒を思わせる。
中間部を先導するのが、ヴァイオリンのピチカートによるマンドリン風な⑫。この⑫の中には第1部・第1主題③のzが含まれている。