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IV. 偉大なる聖グレゴリウス
ピアノ曲として作曲された前3曲と違い、大オーケストラを前提に作られた音楽なので、冒頭から楽器法も拡大。冒頭⑪の低弦による主題は〈メサイア〉、マーラーの〈巨人〉、〈パルジファル〉等で、神の象徴として古くから使われてきた「ドソラミ=ロマネスカ」の音型。これに大中小、3つのドラを重ねているが、これは教会の鐘イメージ。
ピアノ、チェレスタにハープを加えた聖堂的な響きの中、ホルンが新たな主題⑫aを導入。これはグレゴリオ聖歌の〈感謝の賛歌=サンクトゥス〉。レスピーギがローマ3部作でも象徴的に用いたものだ。
弦が新たに導入した⑬がクレッシェンドして⑭による頂点が築かれた後、オケの大音響と交替して〈サンクトゥス〉の原型⑫bでオルガンが参入。
〈サンクトゥス〉が変拍子に転じた新たな山場を経て、管による〈サンクトゥス〉にチェレスタが絡む。この⑫cに、ヴァイオリン3人とヴィオラの室内楽を重ねた精妙な音響はレスピーギの真骨頂。曲はこの後、既出の主題を総動員したコーダとなり、全楽器を〈サンクトゥス〉や〈ロマネスカ〉が牽引する頂点で結ばれる。