第65回演奏会

65th concert thumb

日程:2020年1月26日(日) 13:30開演(12:45開場)
会場:習志野文化ホール
指揮:金子 建志
演目:

  • ベートーヴェン/「レオノーレ」序曲 第3番
  • ワーグナー/「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
  • マーラー/交響曲 第5番

当日券あり(全席自由: 1000円)

前売券販売所:

  • 習志野文化ホール(TEL 047-479-1212)
  • 伊藤楽器 北習志野(TEL 047-465-0111)

新しい世界への出発、再び

今、ちょっとした「マラ5」ブームが起きている。この秋から冬にかけて、在京プロオケや外来オケがこぞってマーラー5番を取り上げるのだ。マーラーの交響曲第5番、言うまでもなく指揮者やオーケストラ、そして聴衆にとっても、簡単な曲ではないはずだが、今や当代きっての人気曲である。しかし、そうなったのはつい最近のことで、例えば50年前はマーラーはかなり特殊な作曲家で、その交響曲第5番など、全曲を生演奏で聴いたことのある人は世界的にもちょっと珍しい存在だった。それが「マーラー・ルネサンス」によって一変するのだが、日本において、その一翼を担ったのが作曲家・評論家として知られる柴田南雄である。年季の入ったファンの方には、黄色い表紙の岩波新書『マーラー』を手に取られた方も多いだろう。今の水準からすると簡単な概説書程度の情報量かもしれないが、ネットなどもちろんなかった当時、一般の音楽ファンがマーラーについて信頼できる情報を得ようとするならば、それは必ず手に取った本であった。

その後、マーラーを取り巻く環境はさらに激変する。日本のオケも、外来オケも、競ってマーラーを取り上げるようになった。それは、演奏者がその魅力に気づいたからでもあったが、聴衆がマーラーを聞く「耳」を持つようになったということも大きく影響している。音符の洪水、感情的な音の激流、ただ単にそれらの音を浴びるだけではなく、マーラーが仕組んだ仕掛け、それに留まらず譜面の差異、演奏者の細やかな意図など、そういったものを聞きとめる「耳」。そんな「耳」を持つ聴衆がいて初めて、マーラーの音楽は真に享受されるようになった。そして日本において、そんな聴衆を育てた存在が、当団指揮者の金子建志であることは、多くのクラシック音楽ファンが認めるところだろう。

金子建志と千葉フィルがマーラーの交響曲第5番を演奏するのは今回が3度目となる。最初は1989年、昭和最後の日。2回目は2002年、21世紀が始まってまだ幾ばくも経っていない頃だ。意図したことではないのだが、なぜか時代の節目に演奏してきた。そして2020年。この今この時が、変わりゆく時代の節目にあることは、誰もが少なからず感じていることであろう。マーラーは、不安を持ちながらも、新しき音楽を作り、それにより、紛れもなく新しい時代を準備した人だった。そのマーラーの音楽が、今、こんなにも求められているのは、決して偶然ではないはずだ。この演奏会ではまた、ベートーヴェンやワーグナーという、マーラーに至るまでの「系譜」が取り上げられる。そこから聞こえてくる音と、その時代。

系譜といえば、柴田南雄は金子建志の師にあたる。柴田を引き継ぎ、日本にマーラーを聞く「耳」を、いや、マーラーを愛する聴衆を育て、そして当然、自身も深くマーラーを愛する金子建志。その金子の渾身の指揮に、千葉フィルが全力で立ち向かう。その演奏には、新しき時代の息吹が、きっと聞こえてくることだろう。

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