コープランド 交響曲第3番の楽曲解説

Ⅳ楽章 変ニ長調  4/4 序奏部付きのソナタ形式

木管が静かに歌い始める⑭は、グーセンスの委嘱により1943年3月12日に初演した〈市民のためのファンファーレ〉。民意高揚を意図して委嘱された曲だったのだが、コープランドは以下のように述べている。

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「私はこの《市民のための》というタイトルを考案した経緯を覚えている。戦争や軍隊であらゆる辛い仕事を担っているのは、結局、一般人なのだ。そんな一般人こそファンファーレを贈られるに値する」。
⑭がファンファーレ本来の金管と打楽器で壮麗に盛り上がって序奏部が終わると、オーボエ先導の木管群が第1主題⑮で、トッカータ風の流れを導く。更に、ヴァイオリン群が、大道芸的なフィドラーを思わせる第2主題⑯aでウェスタン・カーニヴァル的な主部を確定させる。

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ピアノに多彩な打楽器を加えたロデオ的な狂騒が一旦おさまると、チェレスタとファゴットが⑭で静かな展開部に導く。この中間部では賛美歌を変拍子でルンバ風に味付けした⑰が繰り返され、ラテン的な世界が広がる。

⑯aが再点火したカーニヴァル的狂騒を、鉄槌のような打撃が強引に静止したあと、ピッコロが⑮で再現部を導く。オルゴール的な響きの中から、ハープやホルンによる⑭や、Ⅰ楽章の①等、主要主題が再現されるが、やがて4音連打のリズム主題に縁取りされた⑰aが賛美歌本来の4拍子で堂々と奏され、金管が⑭〈市民のためのファンファーレ〉を凱歌のように再現。Ⅱ楽章の④も、4拍子系の賛美歌⑰bを一段と力強く鼓舞する。

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従来の版では、ここが結論となって、そのままパターン化されたコーダで終わっていたのだが、近年、指揮者のスラトキンが、バーンスタインの主導で削除された8小節の復元を提案。筆者はN響への客演で、初めて聴いたのだが、従来のコーダの前に⑯aが、拡大された⑯bとして再現される本来の姿に驚いた。スラトキン=デトロイト響盤が出る前のLPやCDは、コープランドの自演盤も含めて、全て最後のカットを採用した短縮版での演奏だったからだ。一旦、2014年版を知ってしまうと、もう短縮版に戻る気がしないので、今回も2014年版で演奏する。

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