ドヴォルザーク 交響曲第8番の楽曲解説

Ⅳ楽章 ト長調 2/4 変奏曲+ソナタ形式

初めてトランペットが最初から主役として登場し、颯爽とファンファーレ⑭を吹奏。派手な序奏が終わるとチェロが主題⑮を奏する。⑮は循環形式的に見た場合、Ⅰ楽章でフルート等が繰り返した②の冒頭Yと関連付けることができる。

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弦中心の緩やかな変奏曲は〈エロイカ〉のⅣ楽章を模しているが、この曲は、それにソナタ形式による主部を続けた後、以下のように変奏曲を再現させるのが新機軸。

序奏→変奏曲→ソナタ形式による主部→変奏曲の再現(回想)→コーダ

快速に戻って始まる主部の冒頭は⑮をトゥッティにしたもので、ホルンのトリルが斬新だ(チェコは、ホルン発展の中心地で名手を輩出)。Ⅰ楽章から準主役的な役割を担ってきたフルートには、⑯で一番のスポットが当てられる。

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主部で面白いのは、極端に田舎臭さを強調した⑰。これは〈エロイカ〉の中間部でトルコ行進曲的な“陽気な短調”を使ったベートーヴェンに倣ったもの。こうした遊びは、3小節づつ、半音下に転調していく⑱で、更に笑いを誘う。合唱の発声練習、ジャズの〈16トン〉など、人によって連想は様々だが、敢えて“行儀の良いクラシック”をからかったギャグなのは確かだ。

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このフィナーレで、感銘深いのはトゥッティの喧騒が静まった後、再びチェロが導く変奏曲。こうした場合、回想として短縮することのほうが多いが、ここでは逆。夕陽を最後まで見届けようとするかのように、管がらみでグラデュエーションを変えながら、じっくりと残照を描き切る。コーダは⑮が急テンポで再現され、華やかに結ばれる。

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