先ずは『蛇を殺すための歌』というタイトルそのままの標題音楽として聴くのが正解。舞台は、子牛を一呑みにしてしまうアナコンダやニシキヘビのような大蛇、もしくはコブラやガラガラ蛇のような毒蛇が棲息している熱帯のジャングル。裸同然の原住民達が集まって炎を囲み、祈祷師の呪術的な言葉を全員で繰り返しながら奇声をあげ、石斧を手に『蛇狩り』に出かけて行く情景が目に浮かぶ。
ゴング(死の象徴として使われるドラ系の楽器)が打ち鳴らされ、太鼓群が7/8拍子のリズム主題を刻む①a。7拍子は[2+3+2][3+2+2]等の型が考えられるが、ここの[7/8(2/4+3/8)]は、バーンスタインが〈キャンディード〉や〈ターキー・トロット〉で使った[2+2+3]と同じ。これが、ほぼ全曲にわたって繰り返される。
このリズム主題で重要な点は、曲が進むに連れて①b・①cのように7拍目が強調されていくこと。裏拍にアクセントを付ける『オフ・ビート』によるリズムの活性化は、アフリカやラテンを起源とするジャズと共通。最初にファゴットによって奏される主題②から、7拍目にアクセントが付けられているのだが、このオフ・ビート的強調は、後半になるに従ってカーニバル的な熱狂と化してゆく。
①aでもう一つ重要なのはバス・クラリネットが繰り返す波状音型。この低音域の周期的波動は、地を這う蛇の描写とみなせる。うねりながら進むこの『蛇』の音楽的な役割は〈ボレロ〉の小太鼓に近い。
こうした無限軌道的な反復に乗って、管が次々と繰り出す奏する主題③、④、⑥、⑦、⑧は、意図的に西欧クラシックの特徴を避け、原住民の雄叫びを連想させる。そうした中で、弦が断言口調で鋭く切り込む⑤やトランペット他による⑥は硬いリズムが際立ち、「蛇を殺せ!」と煽り立てる煽動的な叫びのイメージだ。
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