ドヴォルザーク 交響曲第9番 〈新世界より〉 の楽曲解説

ホルンによる第1主題(イデー・フィクス)④aで始まるアレグロ主部では、付点リズムを繰り返す⑤も重要。こうしたリズム主題の反復は、4回が一般的だが、ドヴォルザークは3回で次の音型に入ることが多く、この巧妙な短縮がテンションを高めている。

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木管による短調の第2主題⑥は、最後に主音に戻る際↓ [ファ♯→ソ]という導音進行を避け[ファ♮→ソ]という全音。これによって、例えば、日本人が聴けば、田舎の祭で耳にしたような懐かしさを憶えることになる。非西欧的な民族音楽を意識させる仕掛けの一つだ。

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第3主題⑦aは冒頭の2小節Xに、イデー・フィクス④aの『不可逆行リズム』を含む。後半部は、フルートが奏する時はY1、ヴァイオリンが高音域で歌い直す際はY2のように変化する。この第3主題、提示部は第1フルートなのに対し、再現部は第2フルート。これは自筆スコアでも書き分けられているので、そのまま交替してもらう。

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音の異同で問題になるのがコーダ近くの400小節のトロンボーン。従来の版の頂点の音程が⑧a[ファ♮]なのに対し、自筆譜は⑧b[ファ♯]に読める。今回は、より前衛的な⑧bを採用する。

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