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マーラーはこの〈5番〉でも、楽章をより巨きなスパンで捉える「部=Abteilung」を、以下のように採用した。
「Ⅰ部」=Ⅰ楽章「葬送行進曲」・Ⅱ楽章
「Ⅱ部」=Ⅲ楽章 スケルツォ
「Ⅲ部」=Ⅳ楽章 アダージェット Ⅴ楽章 ロンド・フィナーレ
第1楽章(第Ⅰ部) 嬰ハ短調 2/2 三部形式
トランペットのソロ①に始まるこの楽章は、マーラー自身によって「葬送行進曲」と題されている。〈巨人〉の第3楽章、〈復活〉や〈3番〉の第1楽章よりも「厳格な歩調で」と指定されたぶん、柩を担いで教会に向う荘厳な葬列を連想させる。②のアウフタクトとして使われている付点リズムは、ベートーヴェンやショパンとの繋がりを指摘するまでもなく「葬送」のそれだ。それ以上に瓜二つなのが、メンデルスゾーンのピアノ曲集〈無言歌〉の中の1曲〈葬送〉 Op62-3。以前オーケストレーションし、〈復活〉のプレトークで演奏した際に、詳しく述べたとおりである。
テンポが速まる中間部③は、主人公が戦いの末に命を落したらしい戦場へと聴き手を引きずりこむ。この凄絶な修羅場も、リズム主題Yによって〈運命〉に繋がっている。マーラーが〈5番〉を作曲するにあたってベートーヴェンを意識したのは明らかだ。
曲は「静-動-静」のシンメトリーを形成。追悼の祈りを濃くしたコーダで結ばれる。