マーラー 交響曲第5番の楽曲解説

この楽章は様々なキャラクターが入り乱れる。スケルツォ主部の主役⑬ ⑭ ⑮はいずれも活動的。中でも⑮はトゥーランドットの「ピン・ポン・パン」のような道化の3人組として、演技的にも擬人化されている。テンポが緩む中間部は、農民舞曲的なレントラー⑯に転じるが、やがて⑰嘆きの影が差し、言いがかりめいた威嚇⑱も繰り返される。

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そうした中で最も強くアピールするのは⑫bの後半でオブリガートが繰り返す呼びかけと、それに応えるチェロの応答。これは、シューベルトが〈グレイト〉の第2楽章で描いた森の情景を、ロマン派的に拡大したもので、以下のように解釈できよう。

「時代は中世。狩りで森に入った騎士達は、肩に担いだ狩猟ホルンを吹き鳴らして(⑫b前半)、互いの位置を知らせあう。部下達の場所を確認した騎士長(オブリガート)は、最も有能な部下(3番)とホルンで会話を交わしている間に、自問自答的な疑念が湧いてくる」。そこにはマーラーの心酔していた小説家ジャン・パウルの二重自我=ドッペルゲンガー的な世界が重なる。

“自分探し”は、それ以降、更に大きくなってきたテーマだから、むしろ時代が進むほど、聴き手に深い共感を呼ぶのではあるまいか。その典型が、弦4人のソロによるピチカート⑲。⑰bや⑱が交わす家庭的な会話に親近感を覚える方も多いのでは?

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楽章全体は、ソナタ形式に近い「提示部→展開部→再現部→コーダ」という構造。各部は加速度的に盛り上がるが、収拾がつかなくなるとストップがかかり、⑪bが再スタートさせる。終盤に近づく程⑮がお囃子的に主導権を握り、大太鼓や鞭が煽りたてる中、⑪bで熱狂的に閉じられる。

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