スメタナ 連作交響詩 《我が祖国》 の楽曲解説

 

第5曲 《ターボル》

チェコの民族復興の聖地をタイトルに掲げた最後の2曲で素材としたのは、15世紀の宗教改革に遡るフス党の賛美歌「汝ら、神の戦士らよ」。そして技法的には、フランス革命をテーマにしたベートーヴェンの〈運命〉のリズム主題を応用している。「汝ら、神の戦士らよ」については内藤久子さんが著書「チェコ音楽の歴史」(音楽之友社)で優れた分析(28)を載せておられるので、訳と共に引用させて頂く。

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暗示的な序奏部は、暗黒の中世を暗示する半音下降の(29)と、(28)Ⅰのaによるリズム主題の反復に始まる。トゥッティによる宣言的な強奏(30)は(28)Iのab、木管の弱音による(31)は(28)IIのabによっている。強弱の変化を付けて断片的なコラールとして提示された「汝ら、神の戦士らよ」(28)は、最後にトゥッティで全体が提示され、その結論となるIII「汝はついに神とともに勝利を得るだろう」の音型を「運命主題」的なリズム主題として受け継いで、戦闘的なアレグロ主部(32)に突入する。この主部は(28)の様々な部分を、パーツとして組み合わせた変奏で、ヴェルディの〈レクィエム〉の〈ディエス・イレ〉やベートーヴェンの〈第9〉等の引用も巧妙に組み入れられ、白熱した高揚を見せる。この曲を通して、大小、様々な形で執拗に繰り返されるリズム主題(28)Iaは「フス党の主題」として、そのまま次の曲に受け継がれる。

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