プロコフィエフ ロメオとジュリエットの楽曲解説

 

10 フォークダンス(第1組曲-1)

謝肉祭で賑わうヴェローナの街を、タランテラ舞曲風に描く。原作には無いが、プロコフィエフは『バルコニーの場面』のアダージョ楽章的な陶酔と対比させるスケルツォ楽章的な意味合いで、バレエだと後半に該る第2幕冒頭に、この6/8の陽気な音楽を置いた。〈ペトルーシュカ〉の終景と同様、カーニヴァルの喧騒を描いた音楽なので、大道芸的な呼び込みや粗野な馬鹿騒ぎ等が、前衛的な転調や原色的なオーケストレーションで描かれる。

11 踊り(第2組曲-4)

同じく謝肉祭で踊る5組のカップルの踊り。オーボエが主役を務めるコミカルな音楽で、スケルツォ的な性格を引き継いでいる。

12 僧ローレンス(第2組曲-3)

ファゴットがゆったりとした歩みで描くのはフランチェスコ派の修道士⑰「僧ローレンス」。中間部はチェロが3部に分かれ、超高音のカンタービレで、その慈愛に満ちた心を表す。彼は二人の結婚が、両家の諍いに終止符を打ってくれるのではないか、という密かな期待を持って、結婚式を取り持つ。

prokofiev-romeo-17

13 タイボルトの死(第1組曲-7)

雑踏の中で再び両家の騎士達が出会い、タイボルトは剣で決着をつけようと、マーキュシオとベンヴォーリオを執拗に挑発。秘密裏の結婚式から駆けつけたロメオは、既にキャピュレット家と縁者になったこともあって、両者を必死に説得するが、タイボルトは剣を抜き、マーキュシオも鞘をはらう。

ここまでの前半は、最初に仕掛けた⑱「タイボルト」の好戦的な主題に始まり、⑲「悲劇の予感」、⑳「剣を揮うマーキュシオ」と激しい闘いの描写が続く。⑱「タイボルト」の肉食竜的な獰猛さと、⑳「剣を揮うマーキュシオ」の草食竜的な俊敏さを対比させた鍔ぜり合いも、剣での決着はつきそうにない。見かねたロメオが仲裁に立ちはだかるが、その間隙を衝いてタイボルトがマーキュシオを刺し、一瞬の沈黙の後、倒れた親友を見て激昂したロメオが遂に剣を抜き放つ。弦が激しく無窮動を繰り返す(21)「交差する剣」による後半部は、マーキュシオとタイボルトが最初に剣を交えた第Ⅰ幕の再現だが、最後にロメオの剣がタイボルトの身体を貫く。弱音器付きの金管とチェロのコル・レーニョ(弓の木の部分で、弦を叩く)の歪んだ響きが致命傷を刻印し、弦のスル・ポンティチェロによるクレッシェンドが不協和音による15連打を導く。〈春の祭典〉第Ⅱ部の11回を上回るこの15連打は、テンポが遅いせもあって、fに指定された打音よりも、絶命していくタイボルトを、居合わせた全員が凍りついたように凝視していることを感じさせる休符の威力が見事だ。

prokofiev-romeo-18

prokofiev-romeo-19

prokofiev-romeo-20

prokofiev-romeo-21

以後(22)「死者の縁者達の嘆きと、復讐の誓い」の悲痛な盛り上がりに関して、説明はいらないだろう。

prokofiev-romeo-22

 

タグ: プロコフィエフ

関連記事