プロコフィエフ ロメオとジュリエットの楽曲解説

 

14 別れの前のロメオとジュリエット(第2組曲-5)

大公は「ロメオをヴェローナから追放、見つかった場合は死罪」と定める。ローレンスからそれを聞かされたロメオは、キャピュレットの屋敷に忍び込み、花嫁となったジュリエットと一夜を過ごす。これは、その翌朝の情景。

胸の鼓動を暗示する弦の刻みの再現に乗った(23)「花嫁の含羞」を表す静かな描写が一段落すると、低弦を中心としたロメオを表す音楽となる。ホルンがロメオの決意を力強く示し、クラリネットのソロが応える。①「愛」が繰り返された後ヴィオラのソロ→サックスで繰り返される主題は⑯「愛の抱擁」の変奏に他ならない。

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トゥッティの長大なクライマックスはホルンが(24)「出発の決意」でロメオの雄々しさをヒロイックに表現。最後は①「愛」で締め括られる。

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フルートの低音による長大なコーダの中心主題を(25)「仮死の暗示」としたのは、後にローレンスの策で薬を飲むことが、結果的に死に繋がることを(26)「死」が予告しているからである。

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15 ジュリエットの墓の前のロメオ(第2組曲-7)

ローレンスは、「親にパリスとの結婚を迫られているジュリエットに、42時間、仮死状態に陥る薬を飲ませる」→「葬儀が行われ、遺体は納骨堂に安置される」→「目覚めた頃、ロメオが納骨堂に入り、二人してヴェローナを去る」という策をジュリエットに言い聞かせ、薬を飲んでもらう。ところが、この策を伝える手紙が手違いでロメオに届かなかったために、「ジュリエット死す」の伝聞だけを聞いて納骨堂に忍び込んだロメオは、遺骸として横たわるジュリエットの姿に愕然とする。

曲は、(26)「死」を変奏的に繰り返す悲痛なエレジー。打楽器の強奏を伴う最後の頂点は、絶望のあまり服毒自殺するロメオを表す。静かなコーダで⑮「ロメオへの呼びかけ」の背景で第2ヴァイオリンがリズミックな(27)「ジュリエットの幻影」が奏されるが、これは次第に意識のもどるジュリエットの脳裏に浮かぶ、生への憧れともとれるし、死の刹那にロメオの脳裏を過る、生き生きとしたジュリエットの姿とも考えられる。

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この曲は、第2組曲の最後に置かれているため、ジュリエットの死を暗示する5小節のコーダが加えられているが、内容は、次曲と重複するため、カットしてアタッカで続ける。

16 ジュリエットの死(第3組曲-6)

目覚めたジュリエットは、服毒自殺したロメオの遺骸を目にして絶望し、短剣で自らの命を絶つ。

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曲は、全てが終った後の情景。(28)「ジュリエットの死」を導入として(29)「悲劇と浄化」が二人の死を悼む。クラリネットによる⑯「愛の抱擁」の短かな回想を経て、⑧「恋への憧れと不安」を変容させた息の長い主題をオーボエが奏して、しめやかに閉じられる。

(金子建志)

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