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合唱入りの大作〈クレルヴォ〉の後も、標題付きの交響曲を構想していたシベリウスは、1894・97年にヘルシンキで既に演奏されていたチャイコフスキーの〈悲愴〉を知り、滞在中の1898年にベルリンで聴いた〈幻想交響曲〉に強い刺激を受けた。同年4月に新たな交響曲に着手し、翌99年の初めに完成。同年4月26日、ヘルシンキで自身の指揮で初演した。成功だったが、細部を手直しし現行版となった。
こうした経緯が物語るように、ロマン派の多くの交響曲作曲家が挑んだ“標題付き交響曲”の系譜に属するが、タイトルは無く、具体的な説明も見当たらない。しかし、そこに北欧のフィンランドという国と民族の歴史が刻み込まれているのは明らかだ。
第1楽章 序奏 ホ短調 2/2拍子。 主部 ト長調 6/8 ソナタ形式
序奏部はクラリネットのソロによる長大なモノローグ①で始まる。これは第4楽章でも再現され、全曲の悲劇的な性格を決定づける。複数の主題による第1主題群、最初の形②は、ヴァイオリンと、1拍半遅れでチェロの影が後を追う二重構造。単純なコピーを嫌い、チェロの語尾が拡大されているあたりは、創造性の見本。第1主題群③、④a、④b1は、〈クレルヴォ〉に繋がるヒロイックな高揚感と、大地の広がりを感じさせる。