シベリウス 交響曲第1番 ホ短調 作品39

第4楽章 ホ短調 ホ短調 2/2→2/4→4/4

弦の強奏が、第1楽章冒頭の①を再現。金管による合いの手で悲劇的な重さを加えたアンダンテの序奏部は、前進と逡巡を繰り返した後、チェロ他による㉔を踏み台に、㉕で2/4のアレグロ主部に突入。㉖等のリズミックな変容や、激しい掛け合いを繰り返した後、ヴァイオリンによる瞬間芸的なレチタティーヴォ㉗で中断。チェロのシンコペーションに乗って、ヴァイオリンが雄大な㉘を導く。ハープが協奏曲的に彩りを添える、この雄大な4/4の流れは、㉙で再び2/4のアレグロに回帰。

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既出主題による再現部は一段と激化するが、最後に再び4/4の㉘に行き着き、氷河のように全てを緩やかに押し出してゆく。終着点は短調で、第1楽章と同じピチカートで結ばれるが、第1楽章の⑩がfだったのに対し、第4楽章はmfからpに弱まって終わる。謎めいたエンディングとして名高いこの終止、悲劇的だが、余韻に疑問符を含ませたあたり、結論を聴き手に委ねているようにも感じる。

付記

ロシアによるウクライナ侵略が始まった際、フィンランドは逸早くウクライナ側に立って旗幟鮮明にした。隣国スウェーデンや、帝政ロシアの脅威にさらされ続けててきた歴史が衝き動かしたのであろう。ここに描かれている悲劇的な世界が再現されかねないという危機感は、日本の我々より遥かに強いはず。この曲を聴くのに、そうした21世紀の現実を重ねる必要は無いが、練習に取りかかって感じたのは、その事だった。日露戦争で、バルチック艦隊を殲滅させたことを祝って「東郷ビール」を販売したという史実も、フィンランドだからこそ、という思いを実感させられた。

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