バルトーク 《管弦楽のための協奏曲》 の楽曲解説

テンポが緩まった第2主題部では、ロ短調で木管が奏でるモノローグ⑥が、新たな訴えを繰り返す。

 

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テンポを戻し、③で始まる展開部は、既出主題の組み合わせだが、内容的に重要なのは後半部。最初⑤aで機関車役を務めるトロンボーンが牽引した後、ホルンが上下を逆さにした反行形⑤bでルールを変え、トランペットとトロンボーンが5小節周期のフガートを構成。それが安定した3小節周期に転じるあたりからのリレーは、モンテヴェルディやJ.ガブリエリ等がサン・マルコ大聖堂に金管のファンファーレを響かせた時代を彷彿とさせる。

この曲で、意外に見落とされているのは、キリスト教的な側面。晩年のバルトークが、こうした教会音楽的な金管の響きだけでなく、「三位一体」を意味する「3」を、象徴性だけでなく、具体的な構造として採り入れていることを見逃してはなるまい。例えば③の再現で始まるコーダは、3小節目が3/8に拡大されることで実質は[3+3+3]の9/8拍子となり、到達点としての「3=トライアングル」が示される。

再現部(第2展開部)ではクラリネットが主役を担い、ハープが存在感を強める。最後は⑤aを全金管がユニゾンで奏して締め括られるのだが、誰が聴いても壮麗なヘ長調の主和音で結ばれるはずが、唯一、3番トランペットだけがAs(ラ♭)を吹き、ヘ短調の陰りを隠し味的に加える。全く一筋縄ではいかない業師だ。

Ⅱ楽章《対の遊び》 2/4 3部形式

二つの「間奏曲」的な性格の曲のうちの、最初の楽章。小太鼓⑦が狂言回し的にリズムを刻み、二重奏の開始を告げる。ストラヴィンスキーの〈ペトルーシュカ〉の芝居小屋の場面をヒントにしたようなアイデアだが、この⑦が持続的に叩かれるのは最初と最後のみ。途中ではリズムの核となる中央部だけが顔を出す。

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他の4楽章が変拍子を常態とするのに対し、この楽章だけは一貫して2/4のまま。その機械的な反復に乗って、ファゴット⑧は6度音程、オーボエは3度、クラリネットは7度、フルート⑨は5度、トランペット⑩は2度といったように、楽器ごとに音程を変えながら個性的な音型が披露される。金管によるコラール⑪が短い中間部を形成した後、再びファゴットからパントマイムが再現するが、今度は3本に増えたり、2ペアずつ4本になったりと、量感が増し、そのぶん技としても大きくなる。

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踊り手が先ず二人ずつペアで登場し個性的な踊りを披露する、といったバレエを想定して作っておいたアイデアを転用した可能性が指摘される楽章だ。

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