バルトーク 《管弦楽のための協奏曲》 の楽曲解説

Ⅴ楽章〈終曲〉 2/4 ソナタ形式。

ホルンが強奏する主題⑲のあと、⑳のように低弦が民族楽器的に開放弦を掻き鳴らし、ヴァイオリンの無窮動が続く。この無窮動は、何度か中断されるが、音型や音程を変えながら楽章全体を支配する。バルトーク自身はソナタ形式と述べているが、中心となるのはこの無窮動で、これを主題としたロンドソナタ形式とみても良いだろう。最初の頂点㉑から静に向かったところで、ファゴットの先導で木管が⑲によるフーガを形成。フルートによる㉒から曲想が変わり⑲の反行形を中心に、休息に向かう(㉒も実は⑲の反行形である)。

concerto for orch 19

concerto for orch 20

concerto for orch 21

concerto for orch 22

オーボエが、農作業の再開を促す掛け声のような㉓を吹き、再び無窮動がスタート。豚飼いの角笛を模したとされる、素朴で力強い㉔aをトランペットが吹き、新たな指標を示す。この新出主題に反行型を交えた金管の掛け合いが静まったところで、ティンパニのグリッサンドが⑫dを導く。ハープとヴァイオリンの倍音奏法が宝石のような光を発するこの主題は、「ロマネスカ」⑫bに他ならない。

concerto for orch 23

concerto for orch 24

concerto for orch 12d

この後、㉔aは、第2ヴァイオリンに始まるフーガの伽藍を築き、㉔bのように変化してカノン的に重なり合って、後半部における主役としての役割を鮮明にする。キリスト教信仰が築きあげてきた都市も国家も文化も、破壊し尽くされていく中、バルトークは㉔aに、「ロマネスカ」⑫bで、新たな希望を託したのではあるまいか。

concerto for orch 24b

弦が「運命主題」で更なる進展を促し、無窮動が3現。最大級のパワーを持った新主題㉕が㉑を伴って破壊力を発揮するが、㉕は、強力な援軍的な役割を終えると、拡大型に引き延ばされ神秘的なブリッジに変容。

concerto for orch 25

最高速で始まる無窮動の4現は⑲・㉒を中心にクレッシェンドしてゆき、後半の主役㉔aが拡大形となって全オーケストラを陵駕し、ベートーヴェン的な勝利宣言を行なう。コーダを締め括るのも㉔aの中央部だ。

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