第66回演奏会 - 2022年1月16日(日) 13:30開演 会場:習志野文化ホール・指揮:金子 建志・演目:ドヴォルザーク/謝肉祭、ヒンデミット/画家マティス、ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」

サン=サーンス (1835~1921) 交響曲第3番 《オルガン付き》

トロカデロ宮殿のオルガン

saint saens 120x171名前の通りオルガン付きの交響曲、である。ここでいうオルガンとはパイプオルガンのこと。建物と一体化した極めて大規模な楽器で、ヨーロッパでは教会に備え付けられることが多く、教会音楽で頻繁に使われてきた楽器である。であれば、この《オルガン付き》も教会での演奏が念頭に置かれたものかというと、そうでもない。コンサート・ホールにオルガンが備え付けられるようになる流れの中でこの交響曲は作曲されている。

もともと、サン=サーンスはオルガンの演奏に長けており、20年もの長きに渡ってパリのマドレーヌ教会のオルガン奏者を勤め上げた人だった。しかし、当時のフランスには教会以外にオルガンが備えられたコンサート・ホールといったものが無く、サン=サーンスも教会のオルガン奏者の職を辞した後は、フランス国内ではオルガンの腕前を披露する機会に恵まれることがなかった。しかし、世界に冠たる大帝国として繁栄する隣国イギリスでは、1871年に完成したロイヤル・アルバート・ホールをはじめとしてオルガンが備えられた新しいコンサート・ホールが幾つも誕生しており、そこで人々はオルガン演奏を楽しむことができた。だがフランスには良いオルガンもオルガン奏者もオルガン作品もオルガン製作者も豊富であるにも関わらず、オルガンを音楽として楽しむ場が無かった。これはフランス音楽界にとっては由々しき事態であり、フランス音楽界ではオルガンが設置されたコンサート・ホールの建設が急務とされていた。オルガンがある新しいホールの建設という大事業はなかなか具体化しなかったのだが、ここで転機となったのが1878年の第3回パリ万国博覧会。この万博は数回に渡って行われたパリ万博の中では地味な方に入るが、音楽面に特に力を入れた万博だった。この第3回パリ万博の開催に際しトロカデロ宮殿という大規模なホールを兼ね備えた建物の建築が計画され、関係者の尽力の結果、このトロカデロ宮殿のホールに極めて規模の大きいパイプオルガンが設置される。このホールは大きすぎて演奏会場としては難があったが、パイプオルガンは抜群の音響だったという。ホール完成直後、全15回にも渡ってオルガン・コンサートが開催され、人々はオルガンの響きを楽しんだ。このコンサートの第12回目にサン=サーンスが、13回目にフランクが出演している。二人とも教会のオルガン奏者を勤め上げたオルガン演奏の名手であった。結局、音響の悪さもあってこのホールは20世紀に入って取り壊されてしまうのだが、オルガンは別の教会に移設され今でも残っている。

サン=サーンスは1871年にイギリスを訪れ、前述の完成したばかりのロイヤル・アルバート・ホールにてオルガン・リサイタルを開催している。この後、オルガンとオーケストラを融合させようというアイデアがどこからか出てきたのであろう。ロンドンのフィルハーモニック協会から依嘱を受け作曲したのが、この《オルガン付き》である。初演は1886年5月19日、サン=サーンス自身の指揮によりロイヤル・アルバート・ホールにて開催されている。フランス初演はその後の1887年1月9日、もちろん会場はトロカデロ宮殿であった。1月16日には2回目の演奏会が行われているが、その演奏会をサン=サーンスの友人であったフォーレが聞き、絶賛の手紙をサン=サーンスに送っている。

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