マーラー  交響曲第7番 ホ短調 《夜の歌》

第2楽章 《夜の歌》 ハ長調 4/4 A-B-A-C-Aの5部形式

マーラー自身によってNachtmusikと題されている。モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」と同じ言葉で、ショパンの「ノクターン」と同義語だが、ここで描かれている世界は、かなり幻想的。

〈5番〉の第3楽章で、ホルン群(1+4)の編隊飛行を試みたマーラーは、この楽章を先導する ⑥a では、「普通の奏法による1番ホルン」と「弱音器付きの3番」との掛け合いによって、森に迷い込んだ2人が呼びかけ合うような、立体音響を創り出す。

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木管群の3連符がこだまする ⑦ の中にも ⑥a は顔を出し、⑧a や ⑧b のような戯画的なリズムが笑いを誘う。⑥a をよりメロディックにした ⑥b が安定した流れを確定させるが、そのホルン+チェロの滑らかな流れに、ヴァイオリンが、弓の木の部分で「弦・指板」を叩く ⑧b のコル・レーニョ奏法で“お囃子”的に絡む。こうした戯画的音響は、マーラーが生涯に亙って開拓していった個性的な表現の一つだ。

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「コントラバス+コントラ・ファゴット」の超低音による ⑨ はどこかユーモラスで、長靴を履いた歩兵の行進を思わせる。これに対してチェロが先導する ⑩ は流麗で、漕ぐオールのスピードが一段と上がった様な印象。

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こうした素材がオーケストレーションを変えて反復された後、オーボエが哀れっぽく奏する ⑪ は、マーラー得意の“嘘泣き”の典型。どこか演技的な嘆きは、〈巨人〉の第3楽章の延長線上にある。

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