展開部はホルンの (24) をヴァイオリン・ソロが (22) の拡大型が受けた後、切迫気味に坂を登りはじめる。小休止→再始動という歩みの途中で起爆剤的に点火されるのが (29a)。ラフマニノフはチャイコフスキーの〈4~6番〉に倣って〈運命〉主題を巧みに扱うが、(29a) 最下段のヴィオラは、(29b) のように〈運命〉主題を後ろから読んだ逆行リズムになっている。
展開部は中央で、台風の目に入ったようにトランペット (30) が序奏部のコラールを再現した後、ベートーヴェンが〈エロイカ〉で実践した逆行リズム (29c) を発展させ、一段と警告的な衝撃を (29c’) のように連射し続ける。
主題が重層的に重なる展開部の後半 (31) では、第1主題 (25) を含んだヴィオラの反復が牽引した後、最下段の音型から派生した付点リズムの金管 (32) が再現部を導く。
第2楽章 イ短調 2/2 複合三部形式
メンデルスゾーンやシューマンに倣った2拍子系のスケルツォ。コサック風の騎馬リズム (33) の先導で、主題 (34) がホルン→ヴァイオリンで示される。ホルン、ヴァイオリンとも冒頭が第1楽章の (22) で、リズムは〈運命〉主題を含んでいる。その上部でフルートが反復する (35a) はこの楽章のモットーで、同様に〈運命〉主題の変容。これが (35b) のブリッジとなってスケルツォ主部の中間部、モデラートの歌謡主題 (36)「ロマンスⅢ」を導く。スケルツォ主部はこの (36) を挟んで (33) (34) (35a) が再現される形の三部形式となっている。
トリオは弦の無窮動的な音型と、木管の付点リズムが二重フーガ的なポリフォニー (37) を展開。中間部は金管がコラール (38) で介入下後、再び (37) に戻って三部形式を形成。
この後スケルツォ主部が再現されるため、楽章全体としても図のような複合三部形式のシンメトリーになっている。コーダは再びコラールとなるが、これは第1楽章序奏部 (22b) の回想で、最後は (35a) をピリオドに結ばれる。