セルゲイ・ラフマニノフ (1873~1943) 交響曲第2番 ホ短調 作品27

 

第3楽章 イ長調 4/4  三部形式

交響曲の緩徐楽章というよりは、ロマン派オペラのアリアを思わせる長大なアダージョ。序奏主題(後にエンドテーマでもあることが判明する)(39) の後、クラリネットが静かに主題 (40)「ロマンスⅣ」を奏する。ピアノ協奏曲第2番の第2楽章と共に、クラリネット奏者の誰もが憧れる名旋律として名高い。〈ヴォカリーズ〉同様、ラフマニノフの天才の証しとも言うべき、滑らかで甘美な無限旋律だ。後半はヴァイオリンが旋律を受け継いでクレッシェンドしていき、(39) の再現で締めくくられる。この主部=第1部はヴィオラで始まった3連符が、常にどこかのパートで底流のようにリレーされることによって、大河のような流れを形作っている。

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中間部は第1楽章の (22c) を変容した (41a)・(41b) がブリッジとなり、コールアングレが呟くような (42) を反復し、自問自答するが、これは次第に切望や悶え (43) のように形を変えて盛り上がり、再び (39) が再現された後、昇天を暗示するように綴じられる。

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再現部は弦が3連符の流れを揺り籠のような形で再現し、(39) がホルン→ヴァイオリンのようにソロで受け継がれていく。主題 (40) はヴァイオリンで再現。これに (39) が絡み合いながら、クレッシェンドし第1部よりもポリフォニックな山場を築く。この重層的な頂点も (39) を境に下り坂に向かうが、コーダは宗教曲的な祈りへと向かい、(39) の反復が天上界の象徴、ドミネ(主)のDを主音とするニ長調へと収斂していく。最後はヴィオラがXを強調して死を暗示した後、イ長調で結ばれる。

第4楽章 ホ長調  2/2  ソナタ形式

チャイコフスキーの〈4番〉やマーラーの〈7番〉同様、それまでの世界から終楽章冒頭で急転し、歓喜の爆発や陽気な騒ぎに一変するパターン。謝肉祭を思わせる4小節の導入に先導された第1主題 (44) が、賑やかなサンタレロ風舞曲という主部の性格を決定づける。

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ピアノ協奏曲〈2番〉の第3楽章に似た短調のエピソード (45)(Xと3連符型のX’を含む)から (44) の再現を経て、第1主題部が終わると金管のファンファーレがニ長調の第2主題部 (46) を導く。この「ロマンスⅤ」が最も長大で、後半では第3楽章の(40) の変容が広大な新天地に到達したかの解放感に導く。

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中間部でアダージョになり (39) (41a) とXが、第3楽章を回想。アレグロに戻った後は、サルタレロの第1主題 (44) に、第3楽章の (42) (41a) を絡めたポリフォニックな展開部となる。下降音階の反復と滝のようなストレッタが再現部を導くが、導入の4小節抜きで第1主題 (44) に直結するのと、木管の (44) と並行してヴァイオリンが新たに力強い対旋律を奏するために、形式がやや解り難くなっているのは否めない。(45) の再現を経て、第2主題 (46) が、今度は主調ホ長調で一段と高らかに歌われ、「運命主題」が3連符の原型で凱歌を頂点に導いた後、テンポを速めたコーダで結ばれる。締めくくりのピリオドが「運命主題」なのは、師チャイコフスキーの〈5番〉へのオマージュか。

(金子建志)

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