Ⅴ 間奏曲 (破壊者)
タイトルからすると、ボルトをねじこむ復讐を思いつくレーニカと、そそのかされて実行犯となる青年ゴーシャを、トランペット⑨と、ヴァイオリンの⑩の掛け合いで描いたパントマイム風の曲のようだ。クラリネット⑪が導入する3拍子のエピソードは、計画成功を夢見るかのようなワルツ⑫に発展。後半は、主役2人の踊りが再現される。
Ⅵ 植民地の女奴隷の踊り
タイトルから内容は連想できないが、前述のリメイク上演では、バーの女給達が絡むシーンで使われていたように思う。低弦⑬が囚われの身を暗示して始まり、イングリッシュ・ホルン⑭→クラリネットが、故郷を思い出したかのような民族旋法で歌う。クラはイスラム風というべきか。
民族楽器タンブリンが先導する中間部は、2拍子のプレストに転じ、第1ヴァイオリンが無窮動的な舞曲⑮で牽引。不穏を感じた監視者(ホルン等)はそれを恫喝して制止させる。後半は3拍子の嘆きが再現する。
Ⅶ 調停者 (イエスマン)
シロフォン⑯が名技的に活躍する協奏曲仕立てのナンバー。最初“ぼけ”や“突っ込み”的に、冷やかし半分で絡んでいたオケが、次第に大編成へと拡大し、赤軍の行進⑰のように変化していくあたりは不気味。
面白いのは、終わる直前に仕組まれた芝居⑱。本来なら、ホ短調の主音E(ミ)のはずが、半音高いFのナチュラル(ファ)で終わるのだ。つまり“叩き損じたように”聴こえるのだが、オケは、トロンボーンのグリッサンドを中心に、最後にミスした調停者を嘲笑って、幕。
この秀逸なギャグは、当時バレエを委嘱した役人には理解不能だった可能性が強いので、最終的な34年の組曲版では、曲ごと、取り下げてしまったのでは?
Ⅷ 全員の踊りと大団円(フィナーレ)
バリトンが⑲で牽引する、陽気な結末。赤軍がらみの工場側は、破壊工作など無かったかのように、健全な労働者と、国の明るい未来を誇らしげに謳って幕。
前述の復活上演では、後半を夢の世界として処理しているが、現在のロシアがソヴィエトを回想するのだから、玉虫色の結論しかありえまい。
(金子建志)
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