ブラームス 交響曲第4番の楽曲解説

Ⅲ楽章 ハ長調 2/4 ソナタ形式

ベートーヴェンが〈運命〉で、短調の交響曲を長調の終楽章で終わらせる「暗→明」の図式を成功させた後、ロマン派の交響曲作曲家達は、それを基本フォーマットにし、そこに社会的・思想的メッセージを織り込もうとした。その背景には「フランス革命によって、より良い社会が築かれるのでは」という期待があったのだが、19世紀末に近づくにつれ、翳りが見え始める。76年初演の〈1番〉で〈運命〉の定型に従った通過儀礼を果たしたブラームスは、85年の〈4番〉で新機軸を示すことになった。それはⅢ楽章に2拍子系の勇壮な長調の音楽を置き、フィナーレを悲劇的な短調で終わらせるというプランだ。これはチャイコフスキーが93年の〈悲愴〉で継承し、マーラーが〈6番〉と〈9番〉で、より自由な形で受け継ぐことになる。

音楽としては「ジョコーソ」(おどけた)という指示が示すように、スケルツォ楽章に相当する。2拍子のスケルツォ楽章はメンデルスゾーンやシューマン等の先例があるが、この楽章はマーチ風で威勢がいい。師シューマンの〈1番〉に倣ってトライアングルを初めて使ったため、音色的にも派手だ。

第1主題 ⑨ は冒頭4小節の上声部と下声部が、湖面に上下が逆に映るのに似た反行型になっている。上下の逆転や、片方だけを独立させたり、掛け合いも可能。これをファンファーレ的な ⑩ が鼓舞する。こうした突撃調の第1主題部に対し、ト長調に転じる第2主題 ⑪ は軽やかで優雅。

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テンポを弛めた展開部では、ホルンが牧歌的な安息をもたらすが、旋律的には ⑩ の変容に他ならない。このトリオ風の展開部は台風の目のように短く、⑩ がファンファーレの原形で回帰し力づくで勇壮な進軍に引き戻す。

既出主題を組み合わせた再現部は、ホルンが ⑨ から派生した雄叫びを繰り返し、一段とエネルギッシュに盛り上がる。

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