西欧諸国から音楽と音楽家を輸入し、「お雇外国人」の手によって音楽文化を形成したロシア。いわば音楽の発展途上国だったロシアだが、そのロシアが音楽先進国の仲間入りをするためにどうしても必要だったもの、それはロシア人の手による本格的な交響曲だった。多くのロシア人作曲家がその課題にチャレンジしたが、19世紀後半に至って先駆者を遥かに超える高いレベルでその課題をクリアする作曲家が現れた。それがチャイコフスキーである。そのチャイコフスキー最後の交響曲が、本日お送りする交響曲第6番《悲愴》である。
西欧諸国から音楽と音楽家を輸入し、「お雇外国人」の手によって音楽文化を形成したロシア。いわば音楽の発展途上国だったロシアだが、そのロシアが音楽先進国の仲間入りをするためにどうしても必要だったもの、それはロシア人の手による本格的な交響曲だった。多くのロシア人作曲家がその課題にチャレンジしたが、19世紀後半に至って先駆者を遥かに超える高いレベルでその課題をクリアする作曲家が現れた。それがチャイコフスキーである。そのチャイコフスキー最後の交響曲が、本日お送りする交響曲第6番《悲愴》である。
1880年6月、チャイコフスキーは楽譜出版社のユルゲンソン社から一通の手紙を受け取った。そこにはモスクワ音楽院院長のニコライ・ルビンシテインがチャイコフスキーに作曲を依頼したいと考えている、と書かれていた。三つのケースがあり、そこから作曲出来そうなものを書いて欲しい、と。三つのケースとは次の通り。①来年開催されるモスクワ産業博覧会の開会式の為の序曲、②ロシア皇帝戴冠25周年記念式典の為の序曲、③救世主ハリストス寺院開幕の為のカンタータ。
1880年1月4日~5月15日(この稿の表記は、すべて旧暦)作曲。同年12月6日、モスクワでN.ルビンシテインの指揮によって初演。
19世紀ロマン派の作品からイタリアに因んだ作品を並べてみると、ベルリオーズの交響曲〈イタリアのハロルド〉(1834年)・序曲〈ローマの謝肉祭〉(1844)、メンデルスゾーンの交響曲第4番〈イタリア〉(1833・37)、リストのピアノ曲〈巡礼の年〉第2年《イタリア》(1837~49)《ヴェネツィアとナポリ》(1859)、R.シュトラウスの交響詩〈イタリアより〉(1886)、ヴォルフ〈イタリアのセレナード〉(1886)等、“外国人が見たイタリア”のオンパレードだ。この〈イタリア綺想曲〉は、その中央に位置する人気作である。
今回は同じバレエ2曲でも、片方は組曲で、チャイコフスキーを代表する人気作。一方は全曲で、しかも殆ど演奏されない“幻の大作”。そのため〈くるみ割り〉が軽い書き方になってしまったのを、ご了承頂きたい。
3大バレエの中では最後に位置し、交響曲第6番〈悲愴〉の前年にあたる1892年(52歳)に完成・初演されている。帝室マリインスキー劇場からの依頼は、ドイツの作家E.T.A.ホフマンによる童話「くるみ割り人形と二十日ねずみの物語」によるバレエ。これを〈椿姫〉の作者デュマ・フィスがフランス語に翻案脚色し、首席振付師プティパが台本化した。
この交響曲の中核をなす楽章で、[長大な序奏部+アレグロ主部+序奏部の再現+コーダ]のように見えるが、実際にはソナタ形式の原理、それも[第1主題=暗]と[第2主題=明]を対比させてドラマティックに展開していくベートーヴェンの〈運命〉に倣った構造になっている。
序奏部ラルゴ3/4拍子の冒頭、チェロ4人+ヴィオラ2人の重奏で室内楽的に奏される①は、ロシア正教会の讃美歌〈主よ、汝の民を救いたまえ〉。ナポレオン軍が攻めてきた頃のロシアには後述のように近代的な意味での国歌は存在しなかった。ロシアでそれに相当するのはムソルグスキーが〈ボリス・ゴドゥノフ〉の戴冠の場で、民衆が「皇帝に栄光あれ!」と歌う合唱に用いた伝承の旋律(一般的には〈皇帝讃歌〉として知られる)と、この①だ。①はプロコフィエフが16世紀に絶対君主として君臨したイワンⅣ世を描いた映画音楽〈イワン雷帝〉でも、恐怖政治の象徴だった王直属の親衛隊を描いた場面《オプリーニチキの合唱》で、威圧的な親衛隊の合唱に対して民衆の願いを代弁するかのよう繰り返される。
「チャイコフスキーがブルックナーに似ている」と書くと疑問に思われる方が多いだろう。一つは、作品の多くが関係者の酷評や提言によって改訂されていることだ。ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲〈第1番〉、〈白鳥の湖〉等の代表的な名曲がそうで、チェロの〈ロココの主題による変奏曲〉のように、変奏曲の順番の入れ換えを含めたチェリストによる改訂版が完全に定着してしまっている曲もあるくらいだ。
チャイコフスキーの交響曲は〈4番〉以降の3曲の人気が高く、CD等でも〈4・5・6番〉を纏めて「3大交響曲」として売られていることが多い。これは演奏する側の事情と繋がっているわけで、〈3番〉より前の3曲を、〈4番〉以降と変わらないくらい積極的に振ろうという指揮者は激減してしまう。それに準じる多楽章形式の管弦楽曲として『組曲』を4曲残しているが、番外的な標題付き交響曲〈マンフレッド〉同様、その演奏頻度は更に少ない。唯一の例外は弦楽のための〈セレナード〉で、これは“弦楽合奏のための交響曲”といっても差し支えないほど充実した内容を備えているせいもあって人気が高く、《ワルツ》は単独でもBGM的に演奏されることが多い。
日程:2004年8月
会場:習志野文化ホール
指揮:金子建志
曲目:
日程:2019年1月12日(土) 18時開演(17:15開場)
当日券あり(全席自由: 1000円) |
前売券販売所:
日程:2023年7月30日(日) 13:30開演(12:45開場)
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