映画監督ルキノ・ヴィスコンティの初期作品に『夏の嵐』という作品がある。マーラーに強く魅了されたヴィスコンティは『ベニスに死す』でマーラーの交響曲第5番の第4楽章を使用しマーラー普及に一役買うことになるのだが、『夏の嵐』ではブルックナーの交響曲第7番の第2楽章を使用している。イタリア名門貴族の家に生まれたヴィスコンティにとってオペラをはじめとするクラシック音楽は非常に身近なものであり、その作品にクラシック音楽が使われるというのは特に奇異なことではないのだが、ヴィスコンティの時代、マーラーもブルックナーも今ほど一般的に聞かれる存在ではなかった。ちょっと特殊な作曲家扱いだったのである。
曲目解説
演奏会プログラムの曲目解説からの抜粋です。
ワーグナー(1813~1883) 《パルジファル》第1幕への前奏曲
19世紀後半に登場した巨人、ワーグナー。そのワーグナーの最後のオペラ《パルジファル》。ワーグナーは創作の中心をオペラにおいていた作曲家で、重厚長大なオペラを幾つも作曲していた。そのオペラ作曲家ワーグナーの最後のオペラである《パルジファル》は、その独特な世界観と相まってワーグナー音楽の神髄と言われることも多い。
チャイコフスキー 交響曲第6番 《悲愴》 の楽曲解説
第1楽章 ロ短調 4/4拍子 ソナタ形式
この交響曲の中核をなす楽章で、[長大な序奏部+アレグロ主部+序奏部の再現+コーダ]のように見えるが、実際にはソナタ形式の原理、それも[第1主題=暗]と[第2主題=明]を対比させてドラマティックに展開していくベートーヴェンの〈運命〉に倣った構造になっている。
バルトーク 《中国の不思議な役人》 の楽曲解説
犯罪者が常軌を逸した化け物に遭遇するというのは、映画でも、古くはヒッチコックの〈サイコ〉や、ホラー映画によくあるパターンだ。この物語も、3人のチンピラが女を囮に強盗を企む、という現実的な犯罪に始まるが、被害者のはずだった役人が、思いもかけない異常な怪物だと判ってくるに従って、攻守が逆転し、非現実的な世界に入りこんでゆく。
シベリウス 交響詩 《エン・サガ》 の楽曲解説
サガは、散文で書かれた歴史的な物語のこと。映画「スター・ウォーズ」の冒頭、メインタイトルの音楽をバックに宇宙空間に向かって流れていく文字列は、その典型だ。ワーグナーはウォータンを主神とする北欧神話「エッダ」と、ゲルマンの英雄ジ-クフリ-トを中心にした「ニーベルンゲンの歌」等、様々なサガを素材に4夜に及ぶ楽劇〈ニーベルンクの指輪〉を創作したのだが、シベリウスは他の多くの交響詩と違って、この曲の素材となった物語を明らかにはせず、ただ〈一つの伝説〉とした。
シベリウス (1865~1957) 交響詩 《エン・サガ》
シベリウスは1865年生まれなので今年が生誕150年のアニバーサリー・イヤーにあたる。《エン・サガ》はシベリウス初期の作品にあたり、1892年に一旦作曲され、その後1902年に改訂された。普段演奏されるのはこの改訂稿であり、本日もこちらで演奏する。同じ交響詩でも、有名な《フィンランディア》(1899、1900)が美しいメロディと力強さに溢れ馴染みやすい音楽となっているのに対し、この《エン・サガ》は、茫漠とした幽玄の世界といった趣であり、途中盛り上がるところもあるが最後は静かに終わる。しかし、シベリウスの確固とした美意識・世界観が強く感じられる作品でもあり、この後に続くシベリウスの作品を予告しているようでもある。