第73回演奏会 - 2025年7月20日(日) 13:30開演 会場:市川市文化会館 大ホール・指揮:金子 建志
演目:ラヴェル/管弦楽のための舞踏詩「ラ・ヴァルス」、マーラー/交響曲第9番

曲目解説

演奏会プログラムの曲目解説からの抜粋です。

プロコフィエフ〈6番〉に隠された運命主題

〈6番〉では、革命や戦争の象徴としての『運命主題』が重要。そのルーツを説明するには、ナポレオン戦勝利を祝って1813年に初演された〈ウェリントンの勝利〉が分かり易い。そこでは、英仏両軍が左右の軍楽で示されるのだが、英国軍が[E1]の小太鼓と[E2]のトランペットで、フランス軍が[F1][F2]で対峙する。この伝統的な軍楽には『運命主題』が、3連符の形Aで含まれている。これを戦争に対する警告として用いたのがハイドンの〈軍隊〉で、より組織的に用いたのが〈エロイカ〉と〈運命〉だが、後者の影響が最も大きいのは言うまでもあるまい。

 

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セルゲイ・プロコフィエフ (1891~1953)  交響曲第6番 変ホ短調 作品111

prokofiev-gravestone-thumb苛烈な戦いが繰り広げられていたロシア。プロコフィエフは映画監督エイゼンシュテインと共に、モスクワから遠く離れた中央アジアのカザフスタン共和国の首都、アルマ・アタ(現在のアルマトイ)にいた。戦火を避けての疎開である。そしてこの地で、エイゼンシュテインが撮影を進める《イワン雷帝》の音楽を作曲する。ロシア革命を避けて出国したプロコフィエフが、ソ連に「帰国」してからおおよそ10年が経つ頃のことだ。

 

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セルゲイ・ラフマニノフ (1873~1943) 交響詩《死の島》の構造分析と自演盤

別稿のように、ラフマニノフが霊感を受けたのはベックリンの油彩画ではなく、M.クリンガーの「死の島(ベックリンの原画による)」という銅版画だった。後に原画を見て明るい色調に驚き「これを見ていたらあの曲は書かなかっただろう」と述べたという。

 

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セルゲイ・ラフマニノフ (1873~1943) 交響詩《死の島》

rachmaninovベックリンの《死の島》

ピアノ協奏曲第2番の大成功によって、交響曲第1番の初演の失敗を払拭したラフマニノフ。そして交響曲第2番の初演は喝采をもって迎えられた。幸せな家庭を築き私生活も充実して、作曲家としても円熟を迎えた頃、ラフマニノフは一枚の絵から着想を得て一編の交響詩を作曲する。それが交響詩《死の島》である。

 

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リヒャルト・ワーグナー (1813~83) 歌劇 《リエンツィ》 序曲

wagner thumbワーグナーがケーニヒスベルクの指揮者をつとめていた23歳の頃、E.B.リットン(英・1803~73年)の小説「コーラ・ディ・リエンツィ」(1835)に触発され、38年にリガで台本を完成。リガ→パリ→ドレスデンと遍歴する間にスコアを書き上げた。ラインガーの指揮によって42年10月20日ドレスデン宮廷歌劇場で行われた初演は、画期的な大成功となり、同劇場の楽長就任へと繋がった。その後〈さまよえるオランダ人〉〈タンホイザー〉で地盤を固めたかのように見えたが、1849年に勃発した革命の際、宮廷楽長の身でありながら革命側に加担したために、一転、政治犯として終われる身となり、スイスへと逃れることになる。

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セザール・フランク(1822~1890) 交響曲 ニ短調

franck-photo以前は、それほど感じなかったのだが、ブルックナーに深入りした後で、改めてフランクを聴いてみたら、2人の共通点があまりにも多いのに改めて驚かされた。それを説明すると、この曲の解明が殆ど済んでしまうので、共通点を列挙してみよう。

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