オネゲルの二重性
オネゲルはフランス近代を代表する作曲家の一人として知られているが、オネゲルは自らのことを100パーセントのフランス人だとは考えていなかった。生まれはフランスの地方都市ル・アーブルであるが、両親はスイス人、プロテスタントの家庭だった(フランスはその大部分をカトリック教徒が占める)。その為、フランスで生活しフランスの学校に通ったにも関わらず、オネゲルはフランスのものとは異なる「スイス的感性」を自らの中に意識するようになる。結局、オネゲルはその人生の殆どをフランスで過ごすのたが、生涯、その「スイス的感性」を捨て去ることはなかった。しかしもちろん、生活の場としてのフランスの影響も しっかりと受けている。そうした、いわばアイデンティティの二重性をオネゲルは自覚していたのだが、それはオネゲルの音楽にも決して無縁では無かった。