曲目解説

演奏会プログラムの曲目解説からの抜粋です。

「みなさん、ワルツを!」 −ソビエト・ワルツ−

soviet-waltz-thumbソビエト連邦の最も偉大な作曲家を3人挙げろという設問があったならば、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、ハチャトゥリヤンという3人の名前を挙げるのが最も妥当なところであろう。この3人に共通する音楽的傾向は何か。例えば金管の咆吼や炸裂する打楽器。これは確かに3人に共通で、かつその音楽を決定的に刻印づけるものである。ではその3人が共に得意としたスタイルには何があるのかと聞かれたならば、どう答えればよいのか。

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プロコフィエフ(1891~1953) バレエ音楽《シンデレラ》から

「灰かぶり」の物語

cinderella-thumb《ロメオとジュリエット》の成功を受け、レニングラードのキーロフ劇場はプロコフィエフに新作バレエ《シンデレラ》の音楽を依頼する。この頃のプロコフィエフは再婚を果たし、またソビエト連邦の地に於いて安定した地位と名誉を獲得するなど、非常に充実した活動を送っていた時期であった。意欲を持って作曲に取りかかったプロコフィエフであったが、独ソ戦の勃発により作曲は中断。結果として1941年から1944年までの長丁場に渡っての作曲となった。バレエの初演は1945年。バレエも音楽も共に絶賛を浴び、現在でもプロコフィエフのこの音楽によるバレエは、バレエの重要なレパートリーの一つとなっている。

 

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チャイコフスキー(1840~1893) 交響曲第1番ト短調 op.13 《冬の日の幻想》

young-tchaikovsky「チャイコフスキーがブルックナーに似ている」と書くと疑問に思われる方が多いだろう。一つは、作品の多くが関係者の酷評や提言によって改訂されていることだ。ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲〈第1番〉、〈白鳥の湖〉等の代表的な名曲がそうで、チェロの〈ロココの主題による変奏曲〉のように、変奏曲の順番の入れ換えを含めたチェリストによる改訂版が完全に定着してしまっている曲もあるくらいだ。

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グスタフ・マーラー(1860~1911)交響曲第10番 補筆5楽章版

mahler-1909時は1909年、交響曲第9番を完成させたマーラーは、少なくとも公的な場面においては、その人生において幾度目かの絶頂の時を迎えていた。1907年に心臓病との診断が下され、一時はひどく落ち込んだマーラーであったが、この頃にはこの病気と上手く付き合っていく術を見つけたようで、作曲・指揮の二つの活動に猛烈な取り組みを見せている。ニューヨーク・フィルとは数多くの演奏会を指揮し、作曲は西洋音楽の一つの到達点と言っても過言ではない交響曲第9番を完成させる。そして、マーラーはこの第9番に留まることなく、そのさらに先を行く交響曲第10番の構想を描き始めていた。また、この年の9月には累世の大作である交響曲第8番の初演を自らの指揮で行い、大成功を納めていた。マーラーのその灼熱のエネルギーは、まさに燦然と光り輝いていたのである。

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ディアギレフとロシア・バレエ団 (上)

diaghilev 1 120x14820世紀文化史に燦然と輝くディアギレフとロシア・バレエ団。この両者については既に様々な場に於いて語り尽くされている感があるが、今回と次回の千葉フィルのプログラムにロシア・バレエ団にゆかりの深い曲が取り上げられることもあって、これを機会に私もその末席に加わってみようかと思う。

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ディアギレフとロシア・バレエ団 (下)

diaghilev 2 120x148ロシア・バレエ団はパリに於いてその名の通り、ロシア的なものを売りとした。西ヨーロッパにとって、ロシアは半分はヨーロッパに属しながらも、もう半分はアジアに属したものであり、異国情緒を感じさせるに十分なものであった。時は20世紀の初頭、あらゆるものを商品にして消費し尽くす資本主義が最初のピークを迎えた頃のこと。そして場所はパリ、人と物が頻繁に行き交うシステムが完成し最新のモードを次々に産み出す享楽の都、であった。

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