曲目解説

演奏会プログラムの曲目解説からの抜粋です。

ショスタコーヴィチ (1906~1975) 交響曲第7番〈レニングラード〉

その交響曲は誰がために

shostakovich 120px「心配することはない。私がいないと始まらないのだから!」その日、コンサート会場の前は混雑でごった返していた。その日の演奏会のチケットは完売だったが、諦めきれない人々が大勢押し寄せ、ちょっとした混乱状態に陥っていた。チケットを持っていた人でもコンサート会場の入り口に辿り着けず、そんな人の声を聞いての言葉だったのだろう。そのルーマニア訛りのドイツ語を耳にして、人々はその声の主を見た。そこにいたのはセルジゥ・チェリビダッケ。本日の演奏会の指揮者である。混乱は治まり、人々は指揮者の為に道をあけ、チェリビダッケはコンサート会場の中に消えていった。そして定刻より少し遅れ、演奏会が始まった。その日の演奏会はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の特別演奏会、指揮者はセルジゥ・チェリビダッケ。曲はソ連の作曲家ドミトリー・ショスタコーヴィチがつい5年前に完成させた交響曲第7番であった。その交響曲を、人々は捧げられた街の名を取って《レニングラード》と呼んでいた。

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チャイコフスキー 大序曲〈1812年〉の楽曲解説

napoleons retreat 120px序奏部ラルゴ3/4拍子の冒頭、チェロ4人+ヴィオラ2人の重奏で室内楽的に奏される①は、ロシア正教会の讃美歌〈主よ、汝の民を救いたまえ〉。ナポレオン軍が攻めてきた頃のロシアには後述のように近代的な意味での国歌は存在しなかった。ロシアでそれに相当するのはムソルグスキーが〈ボリス・ゴドゥノフ〉の戴冠の場で、民衆が「皇帝に栄光あれ!」と歌う合唱に用いた伝承の旋律(一般的には〈皇帝讃歌〉として知られる)と、この①だ。①はプロコフィエフが16世紀に絶対君主として君臨したイワンⅣ世を描いた映画音楽〈イワン雷帝〉でも、恐怖政治の象徴だった王直属の親衛隊を描いた場面《オプリーニチキの合唱》で、威圧的な親衛隊の合唱に対して民衆の願いを代弁するかのよう繰り返される。

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チャイコフスキー (1840~1893) 大序曲〈1812年〉

職人、チャイコフスキー

tchaikowsky 120px1880年6月、チャイコフスキーは楽譜出版社のユルゲンソン社から一通の手紙を受け取った。そこにはモスクワ音楽院院長のニコライ・ルビンシテインがチャイコフスキーに作曲を依頼したいと考えている、と書かれていた。三つのケースがあり、そこから作曲出来そうなものを書いて欲しい、と。三つのケースとは次の通り。①来年開催されるモスクワ産業博覧会の開会式の為の序曲、②ロシア皇帝戴冠25周年記念式典の為の序曲、③救世主ハリストス寺院開幕の為のカンタータ。

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R.シュトラウス アルプス交響曲の楽曲解説

1911~15年2月8日作曲。15年10月28日、シュトラウス指揮のドレスデン王立歌劇場管弦楽団によりベルリンで初演。初演がベルリンになった理由は以下のとおりだ。

「ベルリンのフィルハーモニー大ホールでの演奏のために、私は116人の奏者を必要と しています。つまり木管が倍の人数、即ちあと8人とハープ4台(スコア上は2パート)です。この8人とハープ奏者2名は、私自身がベルリンで見つけることができるでしょう。しかし必要な弦のエキストラは、ドレスデンから連れていきたいのです。つまりドレスデンで総勢107名の奏者を集めて欲しいのです。
オルガン奏者は私がベルリンで手配します。何故なら、オルガン奏者はフィルハーモニーのオルガンについて熟知してなければならないからです。オルガンはとても重要です。例えば雷の場面では、大きな、そして完全なコンサート・オルガンが必要不可欠です。」

(15年6月19日の手紙)

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マスネ 組曲『アルザスの風景』の楽曲解説

Ⅰ・日曜の朝 アレグレット・モデラート 二長調 4/4拍子

村の静かな朝の情景。クラリネットとフルートによる主題①は、いかにも長閑な農村地帯のそれだ。オーボエによる②は、①の3連符を受け継いでいる。クラリネットによる新たな主題③aを契機に、曲は休日らしい『市の賑わい』に発展し、① ②それぞれの舞曲的律動感がトゥッティで強調される。

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バーンスタイン 〈キャンディード〉序曲の楽曲解説

bernstein 1950 120pxドイツのヴェストファーレン生まれの青年キャンディードと、相思相愛の恋人クネゴンデは、一度は結ばれそうになりながら、戦争や略奪など様々な禍に遭遇。世界中の様々な土地で一癖も二癖もある人物と出合い、その都度、それまでの全てを御破算にするような暗転(殺人、宗教的略奪、性的暴力、詐欺など)に巻き込まれていくという、奇想天外なファンタジー。

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