モスクワ音楽院の若き天才
セルゲイ・ラフマニノフは1873年にロシアの貴族の家に生まれた。ラフマニノフの曾祖父や祖父は音楽に造詣が深く、特に祖父アルカーディは見事なピアノの腕前を持っていたという。ロシアにピアノがもたらされたのは19世紀に入ってからのことだが、アルカーディ・ラフマニノフはロシアで最初にピアノ演奏をものにした世代の一人、ということになる。この祖父ほどではなかったが、父親もピアノを演奏した。しかしこの父親、典型的な貴族の御坊ちゃまというべきか、気前良く施しを与えたり投機に失敗したりで、貴族ラフマニノフ家の莫大な財産はこの父親の代であっという間に底をついてしまった。